アグリビジネス(農業)×賃貸借:転用許可
平成31年3月15日東京地判
1.事案
原告らが,被告に対し,原告らが共有持分を有する土地に関する原告X1と被告との間の賃貸借契約が無効である,あるいは解除等によって終了していると主張して,当該賃貸借契約の無効確認を求める事案である。当該賃貸借契約は,被告の売電事業のために締結されたものである。
2.争点
原告は,賃貸借の対象物件の中に農地が含まれているが,当該土地については,農地法5条の許可を得ておらず,また,本件賃貸借契約は農水省が定めた農地転用許可の基準に反しているので,売電事業のために農地転用が認められる余地はなく,原始的に不能であるなどと主張した。
なお,農地法5条は,農地を農地以外のものに転用するため,賃借権等の権利を設定等する場合に,都道府県知事等の許可を要するとする規定。
3.判旨
①農地の売買は,知事の許可がない限り,所有権移転の効力を生じないが,当該契約は何ら効力を有しないものではなく,特段の事情のない限り,売主は知事に対し所定の許可申請手続をなすべき義務を負うとされている(最高裁昭和41年2月24日第一小法廷判決・集民82号559頁参照)。上記は,農地法3条における判断であるが,本件において原告らの主張する農地法5条における転用許可に関しても,当該許可がない場合の効力については,農地法3条4項を準用するとされており(農地法5条3項),上記と同様に解することができるというべきである。したがって,本件賃貸借契約の対象となる土地について農地が含まれているからといって,本件賃貸借契約の効力が生じないというものではない。
②農業委員会担当者が,本件土地について,太陽光発電事業を行うための農地転用許可が可能である旨回答していることなどから,本件賃貸借契約締結時点で,既に農地転用許可が得られないことが確定しているとはいい難く,原始的に不能であるということはできない。
4.コメント
農地で太陽光発電を行う場合,①(農業をやめて)農地転用,②営農型(ソーラーシェアリング:農地に支柱を立てて,営農を継続しながら上部空間に太陽光発電設備を設置し,太陽光を農業生産と発電とで共有するもの)という方法がある。
本件は①のケースである。
なお,②の営農型の場合,農地に立てる支柱について,農地法4条1項又は5条1項に基づく一時転用の許可が必要である。2013年に許可制度にかかる取扱いが明確化され*1,2018年には,一定の場合に一時転用許可期間が3年以内から10年以内に延長する変更がなされた*2。2018年度の実績では,年間481件の新規許可がなされており増加傾向にある。
2020年6月21日に閣議決定された成長戦略フォローアップでも,営農型太陽光発電の全国的な展開を図るとの文言が盛り込まれており,今後も推進策が継続されていくものと思われる。
*1 「支柱を立てて営農を継続する太陽光発電設備等についての農地転用許可制度上の取扱いについて」(H25.3.31 24農振第2657号農林水産省農村振興局長通知)
*2 H30.5.15 30農振第78号農林水産省農村振興局長通知