弁護士藤村慎也

弁護士/中小企業診断士/農・林・水・畜産に興味あります(ときたま最新法・試験対策)

個人情報保護法:感染症対応

1.問題点

新型コロナウイルスの発生に伴い,社内や第三者(取引先,保健所等の公的機関)に従業員の個人情報を開示・公表する必要が生じる場面があります。

典型的には,従業員に新型コロナウイルス感染者と濃厚接触者が出たことから,従業員の個人情報を,①社内に周知する場合や,②取引先・保健所等の公的機関に開示する場合です。

個人情報保護法の関係での注意点は,(i)当初の利用目的を超えているので本人同意が必要ではないか,(ii)第三者提供に本人同意が必要ではないか,という点です。

 

2.結論

結論的には,社内・取引先での2次感染防止や事業活動の継続のために必要がある場合には,本人同意は不要です。

個人情報保護法に即していえば,①②の例では,以下の例外事由に該当し,目的外利用に本人同意を要しないと考えることが可能であり,②の例では,同様に,以下の例外事由に該当し,第三者提供に本人同意を要しないと考えることが可能で。

・「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき」(法16条3項2号,23条1項2号)

・「公衆衛生の向上・・・のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき」(法16条3項3号,23条1項3号)

今般の感染症対応においても,個人情報保護法の例外規定を用いて,災害時の個人情報保護法対応と同様に対応できると思います。

上記の点は,個人情報保護委員会のQ&Aにも記載されています。

 

3.参考

感染した従業員の個人情報や,濃厚接触者に該当する従業員の個人情報は,要配慮個人情報(病歴)に該当する可能性もありますので,社内での公表や取引先への開示にあたっては,当該従業員のプライバシーに配慮し,必要のない情報まで開示することのないように注意することも大切です。