弁護士藤村慎也

弁護士/中小企業診断士/農・林・水・畜産に興味あります(ときたま最新法・試験対策)

野球(ベースボール)を法律で読み解いてみる vol.1~バットが飛んできたら

1.ある左打のホームランバッターが空振りしたとき,手からバットが離れ,バットが観客席にいる私に飛んできたので,バットをキャッチしました。バットは返さないといけませんか。

 

返さないといけません。

バッターは,バットを捨てる意思で手を放したのではなく,偶然手からバットが離れたのです。そのため,バッターは,バットの所有権を放棄する意思があったとはいえません。このように,バットの所有権はまだバッターにあるため,あなたはバットを返す義務があります。

 

2.バットを返してくれたら,その代わりサインボールをあげると言われました。私は,喜んで!と返事しました。私にサインボールをもらえる権利があるのでしょうか。

 

バットを返せば,サインボールを求める権利が生じます。

サインボールをあげる・もらうという合意は,民法上の「贈与」にあたるといえます。

バットを返してくれたらサインボールをあげるという合意だとすると,「停止条件付贈与」と解釈できます。ですから,あなたがバットを返せば,サンボールをもらう権利が発生することになります。

 

3.私がサインボール1個か…とごねていると,やっぱりサインボールをあげるのはやめます,無条件でバットを返してくださいと言われました。サインボールをもらうことはできないのですか。

 

残念ですが,できません。

書面によらない贈与は,民法上,当事者が解除できます。そのため,サインボールをあげるという口頭での贈与の合意は,解除できます。

すぐにバットを返しましょう。