弁護士藤村慎也

弁護士/中小企業診断士/農・林・水・畜産に興味あります(ときたま最新法・試験対策)

アグリビジネス(農業)×法務:労務②

H27.2.27千葉地八日市場支判

 

養鶏等を行う被告農事組合法人*1及び被告株式会社に対し,畜産業従事者である労働者らが時間外手当等の支払いを請求した事案

*1…農業協同組合法に基づき設立された法人で,農業生産についての協業を図ることによりその共同の利益を増進することを目的した法人

 

争点:就業規則に基づく時間外手当等の請求

 

  • 労働基準法41条1号・別表第1第7号*2に該当し,労働基準法上の労働時間及び休日に関する規定は適用されない。

*2…動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他の畜産、養蚕又は水産の事業

  • 被告会社の従業員は,その大部分が養鶏業や農業の現業に従事していたと認められるところ,当該大部分の従業員を除外するような就業規則が作成・届出されることも考えがたく,また,各従業員の出退勤がタイムカードで管理されていたことに照らすと,労働時間等を雇用者側で管理しないことを前提とする労務管理の状況にもなかったといえる。そうすると,X2の従事していた職務の性質から,当然に被告会社の就業規則の適用が否定されるとはいえず,また,職務が労働基準法の適用除外対象にあったことで,就業規則上の労働時間及び休日に関する規定が適用されないことが個別の雇用契約の黙示の前提となっていたとも解されない。

 

なお,X2らが提供した労務の大部分はいずれも被告法人の業務に関するもので,賃金支払いも被告会社・被告法人いずれからも行われてきたことから,X2らとの間の雇用契約は,黙示には,被告会社のみならず被告法人との間でも各締結されていたとし,賃金等の支払義務は,被告会社と被告法人との連帯債務とされた。

 

コメント

畜産業は天候・季節等の自然条件に強く影響されるため,農業従事者の場合,労働時間規制に関する労基法の規定は適用除外となっている(労基法41条1号)。

本裁判例でも,当該適用除外規定の存在から,畜産業従事者が,時間外手当を定めた就業規則に基づき同手当を請求できるか争われた。労働基準法の適用除外規定から,直ちに時間外手当を定めた就業規則の適用も除外されるわけではないから,使用者側は就業規則の適用除外の有無について明確に定めておく必要がある。