アグリビジネス(農業)×法務:労務③(農作業と事故)
3.労災保険
労災保険とは,労働者が業務上の事由又は通勤によって負傷したり,病気に見舞われたり,あるいは不幸にも死亡した場合に,被災労働者や遺族を保護するため必要な保険給付を行うものです。
一般に,労働者(常勤,パート,アルバイト等の名称や雇用形態にかかわらない)を1人でも雇っている事業場は,労災保険への加入義務があります。
ただし,農業に関しては,常時5人以上雇っている個人経営の場合,又は1人以上雇っている法人の場合に,労災保険への加入義務があるものとされています。
また,農業者の場合,強制加入の要件を満たさなくとも,①特定農作業従事者,②指定農業機械作業従事者,③中小事業主等に該当するときは,特別に任意加入することも認められています。
万一の事故のとき,労災保険が下りるのと下りないのとでは,農業経営者の資金負担の面から大きな違いが生じますので,労災保険への加入の検討も必須です。
4.事故時の責任
農業従事者が農作業中の事故により負傷又は死亡した場合,農業経営者は,当該農業従事者に対し,
①雇用関係等にある農業従事者の安全に配慮する義務に違反したとして損害賠償責任を負担したり,
②ある農業従事者の不注意により他の農業従事者が負傷又は死亡したときには,農業従事者を使用するものとしての損害賠償責任(使用者責任)を負担する
可能性があります(このとき,労災保険を使用することができれば,損害の一部を労災保険により補てんすることが可能になるのです)。
以上のように,常日頃から,農作業の安全に注意して農業経営を行っていく必要があります。