個人情報保護法:委託先の監督・慰謝料相場
個人情報保護法の改正にも大きな影響を与えた,教育系事業会社に提供した個人情報の漏えい事件。
教育系事業会社等への損害賠償請求について,以下のとおり,地裁レベルでは責任の有無について判断が分かれることもあったが,近時,高裁で,事業会社側の責任を肯定する判決が徐々に出始めている。
|
一人当たりの損害額 |
責任の内容 |
千葉地判H30.6.20 |
×(請求棄却) |
‐ |
東京地判H30.12.27 東京地判H31.4.25 |
3300円(慰謝料3000円,弁護士費用300円) |
|
東京高判R1.6.27 |
2000円 |
|
横浜地判H29.2.16(一審) |
×(請求棄却) |
‐ |
東京高判R1.6.27(二審) |
2000円 |
教育系事業会社の不法行為責任 |
簡潔にいえば,高裁レベルでは,まだ判決数が少ないが,委託先への監督義務の違反を認め,慰謝料額は2000円とする傾向にあるといえる。
監督義務違反の内容は,MTP対応スマートフォンによる情報漏えいの危険性があることにつき予見可能性があったにもかかわらず,委託先がセキュリティソフトの適切な設定を行っているか否かを監督する注意義務を怠ったとするものである。
委託先への監督義務違反を具体的に認定して肯定した点と,慰謝料額の相場については,同種事件への参考になる。
また,委託先から,定期的にセキュリティ対策の実施状況について報告を受けることの重要性が改めて確認されたといえる。