改正法×著作権法
2020年3月10日,著作権法改正案が閣議決定され,今国会に提出されました。
昨年に案は出来ていたが,ダウンロード規制の在り方を巡って議論が続いていました。
今回の改正案は,「国民の委縮」に配慮し,昨年時点の案よりも規制を緩和したものになっています。
改正の概要は,
1 インターネット上の海賊版対策の強化
2 その他の改正事項(写り込みにかかる権利制限規定の対象範囲の拡大等)
です。
1 インターネット上の海賊版対策の強化
(1)リーチサイト対策
今回の改正案では,
①違法にアップロードされた著作物(侵害コンテンツ)へのリンク情報を集約した「リーチサイト」や「リーチアプリ」において,侵害コンテンツへのリンクを提供する行為
→リンク提供者に対しては,差止請求・損害賠償請求が認められているほか,刑事罰(ただし,被害者の告訴がなければ刑事訴追できない親告罪)の対象になる
②リーチサイト運営行為・リーチアプリ提供行為
→リーチサイト運営者・アプリ提供者に対しては,侵害コンテンツへのリンク提供等を認識しつつ放置するなどの場合には,刑事罰(ただし,親告罪)の対象になる
が新たに規制されています。
(2)侵害コンテンツのダウンロード違法化
音楽や映像については,現行法上も違法(著作権法30条1項3号)・刑事罰化されているが,今回の改正案では,対象を著作物全般(漫画・書籍・論文・コンピュータプログラムなど)に拡大しています。
もっとも,規制対象は,違法にアップロードされたことを知りながらダウンロードする場合のみとし,他にも,漫画の1コマ~数コマなど「軽微なもの」や,二次創作・パロディのダウンロード等は規制対象外とされています。
2 その他の改正事項
主な改正事項として,写り込みにかかる権利制限規定の対象範囲の拡大があります。
この改正事項は,現行の著作権法30条の2の文言上,複製権の侵害にあたると解釈できる余地があった,生配信・スクリーンショット等における著作物の写り込みについて,適法(つまり,著作権者の権利が制限される)と明文化したものです。この点は,以下の過去記事を参照。
今回の改正案では,「著作物を創作するに当たって」という要件や,メインの被写体から「分離困難」なものという要件も削除されています。