弁護士藤村慎也

弁護士/中小企業診断士/農・林・水・畜産に興味あります(ときたま最新法・試験対策)

著作権法:スクショ・生配信と著作権法改正

 スクリーンショットやネット生配信に他人の著作物が偶然映り込んでも違法とならならいよう,著作権法が改正されるという記事が出ました。政府は来年の通常国会で同法改正案の提出を目指しているとのことです。

 なお,文化庁は「写り込みに係る権利制限規定の拡充に関する中間まとめ」を公表し,現在パブコメに付されています。

 今までは違法だったの?と疑問に思う方もいると思いますが,一体何が問題だったのでしょうか。

(1)問題

 典型例で考えてみます。

 スマホで子どもの写真を撮るとき,子どもがピカチュウのプリント入りTシャツを着ていたとします。このピカチュウのプリントは,もちろん第三者著作権を有する著作物です。このため,ピカチュウのプリントが子どもの写真に写り込んでいると,著作物を違法に「複製」したことになるのではないか,という点が問題になります。

(2)現行の著作権法

 結論的としては,現行の著作権法上,違法ではない(複製権の侵害にはあたらない)とされています。

 ここで関係するのが,著作権法30条の2です。

 同条第1項は,「写真の撮影,録音又は録画」の方法で,その対象物(上記の例では子ども)から分離することが困難であるため付随して対象となる物(上記の例ではピカチュウのプリント)は,著作物の創作に伴って「複製」することができると規定しています。

 簡単にいえば,メインの被写体に付随して著作物が写り込んだとしても,著作権法上,違法ではないということです。

(3)著作権法の改正

 しかし,現行法は,方法を「写真の撮影,録音又は録画」に限定しています。

そのため,文言上,①生放送・生配信が対象外となっているとともに,②スクリーンショットや模写等が対象外になっていました。そのため,これらが適法なのか違法なのか,という点が議論されていたのです。

 この点,スマホの普及やIT技術の向上により,誰でも,SNSで動画の生配信を行ったり,スクリーンショットした写真をSNSにアップロードすることが可能となっています。

 また,写真の撮影と動画の生配信とで権利者に与える不利益が大きく異なるわけでもないですし,写真の撮影とスクリーンショットは単に技術の違いに過ぎないといえます。

 そこで,生配信やスクリーンショットにおける写り込みについても,著作権法上,適法と解釈できるよう,著作権法を改正することになったのです(仮に生配信が適法と認められると,それに伴い「複製」だけでなく「公衆送信*」も許容されると考えられます)。

 *「公衆送信」とは,インターネット等により著作物を公衆向けに「送信」する権利のことです。

(4)その他の論点

 上記の「写真の撮影,録音又は録画」という文言以外にも,写り込みが適法と認められるためには,①「著作物を創作するに当たって」という要件や,②メインの被写体と分離困難かつ付随しているという要件等が必要です。これらの要件にも,それぞれ論点が含まれていますので,これらの要件も見直しがされる方向です。