弁護士藤村慎也

弁護士/中小企業診断士/農・林・水・畜産に興味あります(ときたま最新法・試験対策)

東証売買システム×システム障害②

11月30日,東証の株式売買システム(富士通社製)の障害で全取引が終日停止した件で,JPX(日本取引所グループ)の独立社外取締役による調査委員会の調査報告書が公表された。

 

独立社外取締役のみを構成員とする委員会であること,第三者委員会の費用が役員の責任追及訴訟や株主代表訴訟で損害として請求されることもあることを意識し,取締役の手当を抑制するとともに金額を公表したことは興味深い。

 

システム障害発生の原因については,概要,以下のとおり評価している。

 

①システム障害の直接的な原因は,NAS(共有ディスク装置)に搭載されているメモリカードの故障により,当該メモリカードの記憶領域へのアクセスが不可となり,メモリカード全体が機能不全に陥ったとみなされたことである。この点につき東証の対応に問題があったとは認められない。

 

②NAS2号機への即時の自動切替えが行われなかった。その原因は,富士通の作成したNASの製品マニュアルにおける設定の記載に実際の仕様との齟齬があり,マニュアルに記載された誤った内容に基づいてNASの設定が行われていた。富士通に帰責性があるといわざるを得ない。

本番稼働前テストにおいてNAS本体の機能停止という状況を再現した障害テストは実施されていない。当該テストの実施を富士通に求めておくべきであったとも言いうる。東証にも一定程度の責任があったと考えられる。

 

NASの自動切替えが正常に行われずに手動切替えを余儀なくされることを十分に想定しておらず,そのような場合への対抗措置の事前検討が不十分であった。他社においても二重化装置の(自動)切替えが機能しないことにより大規模・長時間の障害が発生するという事象が複数発生していることが報道されていることを踏まえると,手動切替えが必要となった場合の富士通における対応措置の検討には不十分な点があったと評価せざるを得ない。

 

②の原因について富士通の責任が大きいとし,③についても富士通の事前対応に十分でない点があったと結論付けている。

 

②は本番稼働前にいかなるテストケースを想定すべきだったのか,③は他社での障害事例を教訓として具体的に予見できたのか。もしシステム障害に関して責任が問われるとすれば,この点は争点になるであろう。