弁護士藤村慎也

弁護士/中小企業診断士/農・林・水・畜産に興味あります(ときたま最新法・試験対策)

区分所有法制の改正に関する中間試案

区分所有建物(マンション等)の再生の円滑化を図る方策①~賃借権の消滅制度

 

≪現行法≫

建替え決議は、専有部分の賃貸借には何らの影響を及ぼさない。

賃借人が合意解除に応じるか、解約申入れ等の「正当事由」(借地借家法28条)が認められない限り、賃借人を排除できない。

→賃借人の協力がなければ建替事業が進まないので、大きな弊害。

(建替事業の妨害に利用されるケースもある。やり方は言えない。)

 

≪中間試案≫

建替え決議がされた場合、賃借権を消滅させることができる制度の導入

 

【A案】建替え決議において、取壊しの工事の着手時期の目安、専有部分の賃貸借の終了日を定め、この終了日に賃貸借が終了する。

 

【B案】建替え決議があったときは、各区分所有者が指定した人又は賃貸人は、賃借人に対し、賃借権消滅請求ができ、この請求から一定期間経過後に、賃借権は消滅する。消滅したときは、賃借人は補償金を請求できる。賃貸人以外が補償金の支払をしたときは、賃貸人に対して求償権を有する。

 

<雑感>

【A案】は、補償金の支払の必要がない制度(※必要とする考え方もある)となり、使いやすそうだが、ドラスティックな改正なので、果たしてこのまま実現できるか。

【B案】は、「正当な補償」がいくらなのかで揉める可能性があるので、補償基準を設ける必要がある。補償金の支払いと賃借人の明渡しが同時履行になると、使いにくい制度になる懸念がある。

下請法×手形等の支払いサイトの短縮

公正取引委員会は、令和5年2月22日、下請代金の支払いにかかる手形等(手形、一括決済方式、電子記録債権)のサイトの短縮について、再度文書をリリースした。

 

www.jftc.go.jp

 

令和3年3月31日にも、令和6年を目途として、手形等のサイトについては60日以内とする文書をリリースしている。

 

手形支払いの場合、締日→振出日(支払日)→手形の支払期日という流れになる。

ここでいう手形等のサイトとは、振出日から支払期日までの期間のことである。

 

令和6年中に、下請代金の支払いにかかる手形等のサイトを60日以内とするよう、今のうちから対応していく必要がある。

フリーランス×農業法務

2021年3月26日付け「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(内閣官房ほか)が公表されている。

https://www.mhlw.go.jp/content/11911500/000759477.pdf

このガイドラインは、事業者とフリーランスとの取引について、独占禁止法、下請法、労働関係法の適用関係を明らかにし、問題行為を明確化するものである。

しかし、このガイドラインには、「耕地や漁船を有して、耕作や漁業をする農林漁業従事者は『フリーランス』とはしない。」という一文が入っている。

つまり、農林漁業従事者に対しては、このガイドラインが及ばない。例えば、スーパーとの間で直接販売契約をしている農業従事者にはこのガイドラインが及ばないと考えられる。

マイナンバー法の大?改正

令和5年の通常国会で、マイナンバー法の改正案が提出されるとの報道。

 

2022年11月29日のデジタル庁ワーキンググループの「マイナンバー法の改正事項」がベースになると思われる。

 

現行のマイナンバー法は、法律の別表第一で、利用できる主体(行政機関等)とその利用事務が明記されている。法律上の利用範囲の限定が、マイナンバー法の“ウリ”だった。

 

改正内容は、別表に掲げられたものに「準ずる事務」について利用できるようにし、個人情報の種類などに関しても省令で定めれば可とするものらしい。

 

現行のマイナンバー法の構造からみれば、大きな転換になりそう。

ただし、企業・事業者にとって実務対応に影響が生じる改正ではなさそうである。

野球(ベースボール)を法律で読み解いてみる vol.1~バットが飛んできたら

1.ある左打のホームランバッターが空振りしたとき,手からバットが離れ,バットが観客席にいる私に飛んできたので,バットをキャッチしました。バットは返さないといけませんか。

 

返さないといけません。

バッターは,バットを捨てる意思で手を放したのではなく,偶然手からバットが離れたのです。そのため,バッターは,バットの所有権を放棄する意思があったとはいえません。このように,バットの所有権はまだバッターにあるため,あなたはバットを返す義務があります。

 

2.バットを返してくれたら,その代わりサインボールをあげると言われました。私は,喜んで!と返事しました。私にサインボールをもらえる権利があるのでしょうか。

 

バットを返せば,サインボールを求める権利が生じます。

サインボールをあげる・もらうという合意は,民法上の「贈与」にあたるといえます。

バットを返してくれたらサインボールをあげるという合意だとすると,「停止条件付贈与」と解釈できます。ですから,あなたがバットを返せば,サンボールをもらう権利が発生することになります。

 

3.私がサインボール1個か…とごねていると,やっぱりサインボールをあげるのはやめます,無条件でバットを返してくださいと言われました。サインボールをもらうことはできないのですか。

 

残念ですが,できません。

書面によらない贈与は,民法上,当事者が解除できます。そのため,サインボールをあげるという口頭での贈与の合意は,解除できます。

すぐにバットを返しましょう。

アグリビジネス(農業)×農地相続

農地を相続したら?

 

①農地の相続登記手続をする。

 

②市町村の農業委員会に届け出る(農地法3条の3)。

 ⇦農業委員会に様式があるので、問い合わせてもらう。

 

③届出をすると、農業委員会から受理通知がくる。

港則法~港に関する法律

岡山県は,2022年4月7日,県水産研究所(瀬戸内市)が必要な許可申請をせずに瀬戸内海で水質調査をしていたと発表し,玉野海上保安部が港則法違反容疑で捜査しているとのニュース。

 

港則法(こうそくほう)とは。

 

港内における船舶交通の安全と港内の整とんを目的とした法律で,昭和23年に制定された法律。要するに,指定された港の中では決められたルールに従う必要がある,というもの。

 

今回問題になったのは,港則法31条1項と思われる。

「特定港内又は特定港の境界附近で工事又は作業をしようとする者は,港長の許可を受けなければならない。」

 

これに違反した場合は,3月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則がある(港則法50条4号)。

 

水産業にも関係してくる法律です。